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富士日記 (上) (中) (下) [本]

武田百合子著

題名にひかれて読んでみました。武田百合子全作品-1〜7のうち最初の三巻です。夫は武田泰淳という作家で、私は彼の本も読んだことがありません。「富士日記」は昭和39年から昭和52年までの十三年間、富士山の麓にあった武田山荘での暮らしを妻、百合子が記録したものでした。

出来たばかりの山荘には不具合が多々あり、また、慣れない山暮らしの中で発生する水道管凍結やらなんやらの修理の話や、修理を頼む地元の業者さんたちとの交流の話が多いです。また、赤坂の自宅と山荘を自家用車で行ったり来たりするのですが、車の運転からメンテナンスまで全部、妻の百合子が担当しています。この日記の中で、まずは東名高速道路が開通し、その後中央自動車道が開通するという時代です。高速道路がない頃は一般道で富士山へ通っていたようです。相模湖、談合坂、大月、富士吉田町、河口湖、スバルラインなどを頻繁に通っています。前夜遅くまで来客があって、朝早く赤坂を出発して途中休憩しながらなにか食べて山荘に着いたら留守中の掃除をし昼寝をし食事を作り、富士山麓をドライブして回り、あちこちの湖で泳ぐ。東京から編集者やら友人やらが訪ねてくる、出来た原稿を列車便で出しに行く、地元の商店で買い物をする。山荘には電話を引かず、別荘管理事務所へ電話をかけに行く、河口湖町まで電話をかけに行く。百合子はビール大好き。食欲旺盛。そしてエネルギッシュに動き回ります。

なぜかとても面白くて一気に三冊読んでしまいました。男勝りなところがあるというか、いつも真っすぐで、それに夫、武田泰淳氏との関係も良いんだな。無茶をしたり、男に向かって「バカ」などと口汚く言うところもあり、そんな妻をたしなめる夫がいて、時に夫婦喧嘩もして、、、そんなことも百合子は包み隠さずそのまま記録しています。感情が豊かで、富士の風景や庭にくる鳥や動物たちの様子などの観察とその表現も良いんです。そう、、、飼い犬のポコが死んだ時の夫婦の喪失感にはこちらもシンとしてしまいました。猫のタマが山荘の回りで活躍してモグラの子やネズミやキジなどを次々と捕まえては見せに来ます。百合子はタマを褒めつつも、まだ息のある小鳥をなんとか蘇生して森へ返してやろうとします。三巻目になると家や車の修理の話は影をひそめて、次第に体調が悪くなっていく泰淳氏との最後の時間を愛おしむ暮らしぶりが描かれていました。夫が喜ぶように庭に花をいっぱい植えます。

もし時代が今なら百合子はブログを書いただろうか? フェイスブックを立ち上げたかな? ブログ「富士日記」。デジタルカメラで撮った写真も付けて、、、。夫妻と交流のあった作家仲間たちから「コメント」が寄せられたり、見ず知らずの人から「いいね!」とか「nice!」とかもらったり「ツィート」されたり? 

あ、そうそう、いつも百合子たちが買って食べていた談合坂?の「へそまん」が気になります。甘いのか肉まんなのか、、、?
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