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ことばの食卓 [本]

武田百合子著

武田百合子全作品-5。1981年〜83年にかけて「草月」に連載した十二篇にほか二篇を加えた随筆。「富士日記」に息づいていた百合子独特の視点がここでも展開されています。

たとえば「枇杷」。たしか、、、「富士日記」の中にも泰淳氏と百合子の二人で枇杷を食べる場面があったと思いますが、そこにはただ「夫が二個食べる間に私は八個食べた」とだけ書いてあったように思います。そのエピソードがここではさらに細かに描かれています。泰淳氏の台詞が良いんです、、、「こういう味のものが、丁度いま食べたかったんだ。それがなんだかわからなくて、うろうろと落ちつかなかった。枇杷だったんだなあ。」 二人で枇杷を食べたその場面を思い出して、今はもういない夫を百合子は偲んでいます。夫の肌の色、指の形、歯がなくて歯茎を使って枇杷を噛む様子、タラタラ垂れる枇杷の汁、その表現の中に百合子の愛情が現れていて、そんなところが私も好きです。

タイトルは以下の通り
「枇杷」「牛乳」「続牛乳」「キャラメル」「お弁当」「雛祭りの頃」「花の下」「怖いこと」「誠実亭」「夏の終わり」「京都の秋」「後楽園元旦」「上野の桜」「夢、覚え書き」
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