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さざなみのよる [本]

木皿泉著

内容紹介:小国ナスミ、享年43。息をひきとった瞬間から、彼女の言葉と存在は湖の波紋のように家族や友人、知人へと広がっていく。命のまばゆいきらめきを描く感動と祝福の物語。2019年本屋大賞ノミネート作

木皿泉(きざら いずみ) 日本の脚本家。和泉務(いずみ つとむ)と妻鹿年季子(めが ときこ)、夫婦脚本家。神戸市中央区在住。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書「二度寝で番茶」など

2016年、2017年のお正月NHKドラマ「富士ファミリー」が懐かしい。ナスミ(小泉今日子)、鷹子(薬師丸ひろ子)、月美(ミムラ)、日出夫(吉岡秀隆)、愛子(仲里依紗)。たしか、、、マツコデラックスが出演していた、いや、あれはロボットだったかな。人と人の不思議なつながりがふわふわと広がっていく。心に残る言葉がたくさんあり、読んでいるうちになんでか涙がでます。「おんばざらだるまきりくそわか」は「生きとし生けるものが幸せでありますように」の意味のおまじない、とあります。これからは自分もちょいちょい唱えてみようと思います。読んでよかった。
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異国の客 [本]

池澤夏樹著

内容紹介:家族と共にフランス・パリの郊外フォンテーヌブローに移住した著者は、18世紀の家に住み、朝市の食材の豊かさに驚嘆。高校生のデモの明快な意思表示に民主主義の本来の姿を見、ローマ法王の訃報に接し信仰の意味について考えを巡らせる。「その土地を拠点としてものが見えること、世界のからくりがわかること、が大事なのだ」。異国の客として暮らす日々の発見と、しなやかで豊かな思索のクロニクル

池澤夏樹(1945年-) 帯広市生まれ。埼玉大学理学部物理学科中退。75年より3年ギリシャに暮らす。88年「スティル・ライフ」で第98回芥川賞受賞。2004年「イラクの小さな橋を渡って」「憲法なんて知らないよ」「静かな大地」などの著作活動全般について第7回司馬遼太郎賞受賞

視野が広いし、視点が多岐だし、博識だし、行動力が半端ないし、すごい人です。その土地を気に入ってしまったら、ギリシャだろうと沖縄だろうとフランスだろうと住んでしまう。パリではなく、フォンテーヌブローなんですから、一人ではなく家族を連れて、なんですから、飄々としているというか、綿密というか、驚きです。町のマルシェのキラキラの食材について書いているかと思うと、政治、経済、宗教、歴史、文学など、いつの間にか深い世界へと導かれます。私には難しいところもあったなぁ。
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浜の甚兵衛 [本]

熊谷達也著

内容紹介:明治三陸地震で2万人を超える犠牲者が出た19世紀末。三陸の仙河海港で沖買船の商売をしていた菅原甚兵衛は、富裕な魚問屋マルカネの社長と女郎屋の女将の子で、正妻の子である兄とはそりが合わず、鬱屈を粗暴な振る舞いに込めて暮らしていた。海上の事故で船を失った甚兵衛は、大きな借金を抱えつつ、北洋でのラッコ・オットセイ猟に賭けて出る。著者ライフワーク「仙河海サーガ」の出発点にして最新作!

よくいえば「男気がある」甚兵衛ですが、函館、仙台、横浜と行く先々で女を作るあたりがどうもすっきりしません。ラッコやオットセイの狩猟なんて、今ではとんでもないことですが、当時はクジラやマグロ漁の続きのような感覚だったのかと思います。 神沢利子・長新太の絵本「いたずらラッコのロッコ」の中にもラッコ漁の人間が出てきていたな。
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うつくしい列島 [本]

地理学的名所紀行
池澤夏樹著

内容紹介:北海道から東北、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄―、列島の各所を自ら歩き、「日本」そのものを科学的に思索した名エッセイ36編を収録

池澤夏樹(1945-) 帯広生まれ。日本の小説家、詩人。翻訳、書評も手がける。日本芸術院会員。88年「スティル・ライフ」で芥川賞受賞。おもな小説に「マシアス・ギリの失脚」(谷崎潤一郎賞)、「花を運ぶ妹」(毎日出版文化賞)、「カデナ」など。エッセイに「終わりと始まり」など

「あいぬ物語」を探した時、池澤夏樹=個人編集 日本文学全集にいきあたりました。どんな人なのか知らなかったから何か読んでみようと思い、借りてみました。そして私はすっかりファンになりました。本著の第一部は「ナショナル・ジオグラフィック」2010ー2011年掲載のエッセイから、第二部は日本交通公社の雑誌「旅」1989-1990年掲載のエッセイからできています。去年私たちが訪れた北海道雨竜沼湿原も紹介されていて、それがなんか嬉しい。
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我は景祐 [本]

熊谷達也著

内容紹介:幕末、鳥羽伏見の戦いにより朝敵となった会津藩への出兵を迫られた東北の雄・仙台藩。義を取るか、我が身を取るか――。究極の選択を迫られるなか、若き藩士・若生文十郎景祐が立ち上がる! 奥羽越列藩同盟を導いた男達の知られざる暗闘と、戊辰戦争の新たな一面を描いた、著者新境地となる感動の時代巨編!

戊辰戦争時の仙台藩の動きを詳細に追っています。藩内で議論が分かれ、二転三転する、江戸や京都の情勢が目まぐるしく変わる中、東北には情報が遅れる、同時に仙台からの使者や手紙も伝わるのに時間がかかる、、、そんなこんで、結果、新政府に敗れ、降伏という憂き目にあった仙台藩。主人公の景祐をはじめ光る人材がありながらも生かし切ることができなかったらしい。戊辰戦争を回避できなかった仙台藩の動きはどんなに贔屓目に見てもグズグズでした。残念。

宮城県南部の丸森町、筆甫(ひっぽ)地区は、2019年の台風19号の豪雨で大規模な浸水があったところです。そこを拠点に新政府軍と戦って負けなかったのが景祐。その景祐の軍で活躍した農民の中には豊臣秀吉の奥州仕置きにより改易、滅亡した奥州葛西氏の縁故のものたちが多かったともあります。こうしたちょっとした史実が面白い。
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あいぬ物語 [本]

「熱源」に登場した「あいぬ物語」に関連した書籍は、台東区中央図書館には2冊ありました。柳田國男全集24に物語の紹介文だけが1ページ。二冊目は池澤夏樹個人編集の日本文学全集30(日本語のために)。そこには、金田一京助による序文と、本文の一部。オリジナルは18章あるうちの2章だけが掲載されていました。南極探検中と南極から帰国した直後の章。日本語の文章の横にアイヌ語のルビがついていました。おそらく、北海道白老郡白老町にオープンした「ウポポイ」には本があるにちがいない。コロナが落ち着いたら、一番に行ってみたい場所です。

ヤヨマネクフは樺太犬を連れて南極探検へ参加。白瀬矗隊長のもと、開南丸で芝浦から出港したのが1910年。前人未到の南極点を狙っていたが、1911年、ノルウェーのアムンセンが先に南極に到達。1912年、日本隊は南緯80度05分、西経156度37分にまで到達したが、南極点は諦めて帰国。その際、極地に置き去りにしなくてはならなかった犬がいたようです。もしかするとその犬たちは「南極物語」のタロ、ジロか!と思いましたが、時代がちがいすぎす。タロ、ジロは1956年以降のことでした。でもタロとジロの名前はヤヨマネクフの時の樺太犬にちなんで命名されたそうです。
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いつもの明日 [本]

熊谷達也著

内容紹介:震災と復興、文学・創作・サイクルライフ、科学や芸術、コロナ禍。仙台市在住の直木賞作家が「日常」の機微をつづるエッセー集。「今日と同じように、また明日がやってくる幸せ」。第1章 震災と復興 第2章 サイクリストのまなざし 第3章 歴史の中の東北 第4章 文学・創作を語る 第5章 科学・美術・映画 第6章 物書きの日常 第7章 世相を読む

熊谷達也(1958-) 仙台市生まれ。「ウエンカムイの爪」で小説すばる新人賞。「漂泊の牙」で新田次郎文学賞。「邂逅の森」で直木賞、山本周五郎賞。震災後は気仙沼をモデルとした「仙河海シリーズ」に取り組む。仙台市青葉区在住

「はじめに」の中に「平成28年10月から令和2年3月まで、毎週火曜日、河北新報の夕刊に177回続いたエッセイから厳選された134編に書き下ろしの1編を加えて一冊の本ができた」とあります。仙台に在住する作家としての目線です。目下、自転車が趣味な彼が、広瀬川から閖上に至るサイクリングロードを走り、漁港の朝市で海鮮丼を食べる姿がありありと目に浮かびます。貞山堀、泉ヶ岳、蔵王、牡鹿半島、気仙沼など、地元の話題が豊富。仙台に帰省した時に、両親に連れられて行って見た景色と重なります。
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熱源 [本]

川越宗一著

内容紹介:樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。

樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作

川越宗一(1978-) 大阪府生まれ。龍谷大学文学部史学科中退。バンド活動を経て会社員として勤めるかたわら、2018年「天地に燦たり」で松本清張賞を受賞してデビュー

史実を元にしたフィクション。人間の営みの壮大な物語。元になっているという金田一京助著「あいぬ物語」は、樺太アイヌである山辺安之助の半生記で、山辺の口述をアイヌ語研究者の金田一京助が筆記したもの。確かに、本著でも南極探検から生還したヤヨマネクフが自ら金田一京助氏に依頼して書いてもらう、とあります。「あいぬ物語」も機会があれば読みたい。

冒頭と結びは1945年8月のサハリン。実際のストーリーは、明治維新期まで遡り、主人公ヤヨマネクフたちの幼少期、そして日清、日露戦争がある。同時にヨーロッパではポーランドがロシアによって支配されていた1880年代、こちらの主人公はブロニスワフ・ピウスツキ。彼はサハリンの少数民族ギリヤークの言葉や習慣を研究することから、のちにアイヌの人々とも交流していくことになる。ポーランド人でありロシア人でありギリヤーク人の友人であり、さらにアイヌの妻を持つ、という彼こそは人種という枠を軽々と乗り越える人なのです。

現代でもなお少数民族に対する大国の支配が横行し、弾圧や紛争があること、多くの弱い人々が苦しんでいることを改めて考えなくては。しかし、そうした人類の問題だけが本著のテーマではないのでは、と思います。実は、登場人物それぞれが個性豊かで面白い。例えば金田一京助や白瀬矗、アイヌの頭領バフンケやイペカラ、早くに疫病で死んでしまったヤヨマネクフの妻キサラスイ。「ヤヨマネクフの息子はどうなったかなぁ」と途中でふっつりと消えてしまった人も気になります。
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十二月八日の庭 [植物]

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モンキチョウ、だと思う

軒下のプランターはピンクのゼラニウムが咲いています。その隅っこにモンキチョウが倒れていました。このチョウは十一月末に見たチョウだと思います。グラリオの黄色の葉っぱの上にじっととまっていたチョウ。チョウの越冬の仕方は色々あるみたいですが、このチョウはもしかするとこのままプランターの中で越冬するのかもしれません。ゼラニウムが良い隠れ家になりそうだし。
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安中榛名

仙台へ行くためにいつものJR東日本の大人休日倶楽部バスを使いました。特急や新幹線に四日間乗り放題なので、もったいないから月曜日は東海村へ。火曜日は東海村から安中榛名へ行ってみました。北陸新幹線の駅ですが、今まで降りた事がありませんでした。半日しかないし、安中榛名くらいがちょうどいいかと思ったわけです。

安中榛名駅に着いたのが13:10。新幹線の大きな駅舎はガランとして隅っこに「荻野屋」があるだけです。「肉そば」を食べてみました。美味しい。駅前のマップをみてみると、、、南の方へ行けば信越本線があります。磯部駅が一番近そう。1時間か2時間歩けば行けそうな気がしたので、歩き出しました。安中榛名駅前の「天空の丘」から妙義山(だと思う)が見えます。そこから「みのりが丘」という団地のなかを降っていく歩道が整備されていました。斜面を切り開いて造成した、郊外型住宅というのか、各家に薪ストーブがあっておしゃれで雰囲気が良い団地です。

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こんな道です

秋間川まで降り、そこからはちょっとした山越えの幹線道路を歩きました。山側には薮があってオレンジ色のカラスウリがよくなっていました。1000コくらいあったでしょう。そのうちの1コをもぎってきました。そろそろ足の裏に違和感を感じ始めた頃、「下後閑公民館前」のバス停でした。磯部駅行きのバスが15分後にくる、、、。次のバス停「花の木」まで15分歩いてバスに乗るうと再び歩き出したら、すぐ斜め向かいに「つぐみ Books & Coffee」というおしゃれな店がありました。「ここでコーヒーを飲んで、あとはバスに乗ろう」と決めて入店。店内はお客さん8名で満員となっていました。おそらくコロナのために人数を制限しているのでしょう。コーヒーは諦めて奥の本コーナーを見せてもらいました。そこには山の本がたくさんあって、とても良さげ。15分では全く足りません。仕方ありません。いつかきっとまたくるぞ、と心に誓いつつ、後にしました。少し遅れましたが、バスはちゃんときました。「下後閑公民館前」から下部駅までは実際かなり距離があり、意地を張って歩き通さなくてよかった、としみじみ。
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